技を練って、心を練る。 - 好きになってしまった合気道
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Text and Photography by たなかのりこ
「何かをはじめたい・・・」
鈴木順子先生は女性では数少ない合気道の有段(6段)者。しかし、かつては運動が苦手な女の子だったという。
走りに自信が持てずに過ごした学生時代、選択した部活動もまた体を使うことではなかった。文系の部活動をこなしつつも、17歳になると「何かがしたい!」と強く思うようになる。しかし、何をしていいのか分からない。誰もがそんな風に思う時期があり、先生もその一人だったのかもしれない。何か打ち込めるものを探そう!そんな時に鈴木先生が思いついたのは電話帳に載っている習い事の教室に片っ端から電話してみること。見学をさせてもらいながら自分の道を決めてみようと考えたのである。
たくさんの教室が載っている電話帳から自分に合ったものを探そうと考えた先生が最初に電話した先は(財)合気会だった。「あ」も「い」もあいうえお順でいくと早いうちに名前が出てくるのである。
「合気道人生のはじまり」
電話で問い合わせて、さっそく道場の見学に行く。
初めて目にしたのは100畳分ほどの広さでたくさんの生徒が稽古している姿。合気道は見るのも初めてだったのだ。その躍動感やスピード感に一瞬で運命的なものを感じたのだという。さっそく入門し稽古に通うようになるが、規程の週一回の時間だけでは覚えられないと思ったそうだ。その後先生は、合気道の面白さに導かれ毎日のように道場に通うようになる。まさにそこから合気道人生がはじまったのである。
合気道には試合がない。柔道や剣道のように勝った負けたという結果がないのである。それが合気道の魅力の一つと鈴木先生はおっしゃる。
実際に鈴木道場で筆者が目にしたのは、早さや力強さを技として表現している姿だった。そしてその姿の多くに「点」を感じた。例えば誰かに手を不意に掴まれたとき、自分が動ける間に押さえておくと良い「点」がある。瞬時に判断し、その「点」に心と身体を集中させる。その姿が稽古場でとても美しく感じられた。合気道は丹田(体の中心)を鍛えるということであるという先生の教えが、稽古場の空気から伝わってくるようだった。まさに「技を練って、心を練る」という言葉のとおりである。
「合気道が面白くてしかたがなかった」
先生のこの言葉が特に印象的である。
高校卒業後、好きな合気道を続けられるようにと就職した先は婦人警官の道だったという。しかし、勤務の合間では合気道に携わる時間が少なかった。先生にとって大好きな合気道と関わる時間をもっと大切にしたいという思いと、もっとたくさんの人に知ってもらいたいという思いが強くなり、その後指導者への道を選択することになる。今では先生が指導した生徒の中から指導者になっている方もいるという。
何かをしたいのに、何をしていいか分からない。だから今は何もしない・・・。ますますそんな人が増えているように感じる昨今、鈴木先生が強く心に抱いた「どうしても何かをしたいのだという意思」の重要性を考える。何かをはじめたいと強く願ったからこそ、その先の人生を左右するほどの学びに出会えたのだと思う。
フードコーディネーター たなかのりこ
フリーライターでフードコーディネーター。ズバリ「おいしい」という感動を伝えたくて書き続ける。
只今食と住のはなし更新中。
自身でも男性のための料理講習「メンズクッキング」で講師をし、学ぶ→伝える(教える)を実践中。まだ知らない学びの場の発掘のため、いろんな所に出没します!