とりとめのない日々に発見する幸せ
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Text and Photography by たなかのりこ
「女の子が経験する女の子の時間」
授業中にノートに落書き、それはほとんどの人が経験していることだろう。もちろんそれだけでなく落書きは誰もがやっていて、さらにそれが女の子ならばきっとお姫様を描いていたはずである。
描くお姫さまはもちろん自分の分身!これは女の子だけが与えられた特別な時間とも言うべきだろう。
誰よりも可愛いお姫様を描きたいとう共通のテーマの元、普段身につけることのないワンピースやドレスに、カールした髪、こうだったらいいなぁ・・という願望を女の子たちは競い合って表現する。けれど、そんなに思い通りに表されるはずもなく、いつも現実に引き戻されてしまうような絵しか描けなかった経験を私はしている。
そんな夢見る時代に、自分が思い描いたとおりの憧れの世界を実際に描いてくれたイラストレーターさんの存在は大きい。一枚のイラストから受ける嬉しさやワクワクや眩しさは、言葉で表現できない感情となってそれぞれの記憶にあるはずである。それを私たちに与えてくれたのが田村セツコ先生である。小さな頃から落書きが大好きでお姫さまをよく描いていたとおっしゃる田村先生は、憧れを描いたメルヘンの世界から抜け出てきたような眩しい笑顔で、ご自身が描かれたイラストの女の子の可愛らしい仕草を真似てくれた。
「どうやったらイラストを描く職業に就けるの?」
物語を読んで勝手に挿絵を描いていたのよとおっしゃる田村先生。
赤毛のアンを読んではイメージする風景を紙に表現していたのだそうだ。大好きな女の子の表情をもっと豊かにするために、ポーズやしぐさを研究していった。雑誌を参考に自分なりにアレンジしながら過ごす少女時代。今よりももっと想像という感性が研ぎ澄まされる環境で過ごしていたとも話す。
そして出会ったのが抒情画家で童画家の松本かつぢ先生だったという。松本先生が昭和13年に連載が始めた「くるくるクルミちゃん」は少女漫画の先駆け的存在として有名である。
その他たくさんの作品を残され、またグッズクリエーターとしても活躍されたという松本先生に憧れていた田村先生は、ある雑誌のひと言にすぐに行動を起こしたのである。「憧れの先生にお便りしてみませんか?」ずっと絵を描く仕事に就きたい、そう願う気持ちが一通の往復はがきを松本先生に送ることになる。「雑誌に絵を描くお仕事には、どのような勉強と、手続きが必要なのですか?」もしかして返事が来るかもしれないとの期待をよせて送られた往復ハガキは、予想以上に早く田村先生へと返事を運んできてくれた。
「あなたの作品を送ってください。良かったら道をつけてあげましょう。」
それはきっと飛び上がるほど嬉しい瞬間だったに違いない。時代が変わって、直接このように接することができない世の中となっているので、現代では田村先生のようなケースは生まれにくいだろう。
しかし、なりたい自分になるために『どう努力をすればいいのか』と真っ直ぐに聞かれたら、きっと何か役に立つことを話してくれるのではないだろうか。
ずっとイラストレーターとして活躍されてきた田村セツコ先生が生徒さんを迎えて教えるのは「大人の絵日記」作成講座である。
絵日記と言えば、小学生の夏休みに何日も溜め込んだ上、嫌々作成したという記憶しかない。しかし、先生は「毎日の中に、ちりばめられているキラメキをそのまま見過ごすのはもったいない!!」
とおっしゃる。
自分の目にエンピツがついていると想像し、世の中のことをデッサンするように観察すると、たくさんのヒントが見えてくると話される。電車にのったり、人と話したり、お店で食事をしたり・・・たくさんの日常を感覚で捉えるという習慣がない私にとってはちょっと想像できない世界でもある。左のページにその日の出来事を文字にして、右のページに絵を描いていく。絵の部分には例えばお買い物したレシートや何かを観たチケットの半券などを貼り付けるだけでもいい。そこに色を塗ったりして飾るだけで、一枚の思い出が仕上がるとうわけだ。かつて絵によって打ちのめされた経験のある私でもこれならできそう!と思ってしまう。つまりそれが何かを始めるきっかけなのだろう。
毎日の中にあるほっとする幸せの瞬間を残すことがきっと心にすてきな"変化"をもたらしてくれるのかも知れません。「難しく考えなくていいのよ」とにっこり笑う先生は、ご自身のイラストに出てくる少女たちそのもの。
自分にないものに憧れて描く想像の世界ではなく、なりたい自分が名実ともにそこにあるという感じである。
女性にとっては永遠の憧れなのではないだろうか。
- 主催者
- 田村セツコ
- 教室名
- 田村セツコのハッピー絵画くらぶ
- 場所
- 東京都豊島区南池袋1-28-1西武池袋本店イルム館9階(池袋コミュニティカレッジ)
- 教室の詳細
- 開講日
10/14~6ヶ月 11回 33,495円
10/14~3ヶ月 5回 15,750円
1/13~3ヶ月 6回 18,900円
絵を描くことがニガテと思い込んでいる方にとくにおすすめ。
きっと自分の可能性にびっくりされることでしょう!
お料理をするように、お化粧をするように、えのぐと紙と仲良く。
おとなになって描くラブリーな「絵日記」ひとりの時間、すきまの時間がイキイキと目玉にエンピツがついているように暮らす。
- 問い合わせ
- TEL:03-5949-5486
インタビューデータ(詳細)
フードコーディネーター たなかのりこ
フリーライターでフードコーディネーター。ズバリ「おいしい」という感動を伝えたくて書き続ける。
只今食と住のはなし更新中。
自身でも男性のための料理講習「メンズクッキング」で講師をし、学ぶ→伝える(教える)を実践中。まだ知らない学びの場の発掘のため、いろんな所に出没します!