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基本を大切にし、伝統を伝えるクラッシックバレエのスタイル

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Text and Photography by たなかのりこ

「クラシック音楽の流れる環境で・・・」

子どもの頃、一度くらいバレエを習いたいと親にせがんだことはないだろうか。まずはあのフワフワのチュチュを着たくて、それからつま先立ちでクルクル廻りたくて・・・単純な憧れである。しかしそんな単純な憧れだけでは到底実現できない世界がそこにはあるのだ。バレエという世界をきちんと目の前にした時、華奢な身体ながらしっかりと芯のある動きを魅せてくれるバレリーナの姿に、ある種衝撃的な印象さえ残る。

憧れを胸に教室に足を運ぶ子供達の成長を見守るのは、エンジェルロイヤルバレエスタジオの片谷沙和子先生。2歳の子どもから社会人まで幅広くバレエの指導をしている。そんな先生をバレエと導いてくれた人物は？と聞くと意外な答えが帰ってきた。

先生が育つ環境にはバレエに必要なものが備わっていたようである。それは、いつも家の中に流れるクラッシック音楽。お父様が趣味でよく聴いていたのだそうだ。そんなクラッシック好きのお父さんが、片谷先生の手を引き、バレエ教室へと通った。それは、ご自身がバレエを習いたいと思ったからなのだそうだ。

そう、先生にバレエを習うきっかけを作ってくれた人は先生のお父様なのである。しかも、ご自身が習うために。今でこそ男性のバレエダンサーは日本人でも名前が世界に知られるようになったが、当時は本当に珍しいことだったと思われる。

「ロイヤルという名にふさわしいバレエのスタイル」

先生が推奨しているのは、英国式のクラッシックバレエである。バレエはイタリアで生まれ、フランスで育ち、さらにロシアに伝わって発展を遂げたと言われている。

フランス王ルイ14世はダンスを愛し、自らも踊ることを好んで「太陽王」を演じた。そして職業舞踏家を育てるために国を挙げてバレエの教育を確立した。1713年にはあの有名なパリ・オペラ座バレエ学校が創立されている。フランスで育ったバレエが各地に広がり、やがてイギリスにも伝わった。他の国が華やかさやパフォーマンスの技術向上へと発展を遂げる中、イギリスでは立ち方、足の高さそして手の動きなど、バレエの基本とは何かを徹底的に追及し、体型付けていった。それが英国式のクラッシックバレエと呼ばれるものである。基本にのっとった独自の教育プログラムにより、今日その伝統が引き継がれている。その英国式のクラッシックバレエを求めてイギリスのロイヤルバレエ学校に入学し、世界に名を馳せていった日本人が熊川哲也氏であることは有名である。

クラッシック音楽が流れる家庭で育ち、バレエの技術向上を目指して大学へと進学した先で出会ったこの英国式クラッシックバレエが、先生のバレエへの情熱を加速させていったに違いない。

「まだまだ学びの途中・・・」

世界中でそれぞれの文化を持つバレエ。憧れだけではすまされない厳しいレッスンや表には出せない精神面でのダメージなどもきっと多いはずである。父親に手を引かれ始めたバレエを生涯の職業として考えるまで続けられるというのも努力だけでは出来ないこと。もっともっと技術を身に付けたい、バレエとは何かを知りたい・・・そんな向上心が先生を動かした。

ロイヤルと名のついたバレエ教室は英国式のクラッシックバレエの教育プログラムを教えるRAD（ロイヤルアカデミーオブダンス）が認定するティーチングの資格を取得しなければ開くことはできない。片谷先生はそれを取得し、郷里の秋田へ帰って東北初の英国RADメソッドのバレエ教室を開き、はばたく子供達の教育をしている。

教えながら、子供達が年齢に合わせ変わっていく過程を見ているのが楽しいとおっしゃる片谷先生。ご自身でもまだまだ学び足りないことがあるのだと目を輝かせている。